越後駒ヶ岳での激闘を終え、無事岩原スキー場前駅近くの旅館に到着。荷物を部屋に置いたらまずは温泉に入りに行きます。コロナ対策なのか、夜間の特定の時間は貸切状態になるような仕組みになっています。お風呂は小さめですが、一人で使えるのでとても快適です。豊富な湯量の温泉に浸かりながら、改めて無事帰路に着くことができたことに安堵します。入浴後、夕飯や翌日の食料を買いにコンビニへ向かっていると雨が降ってきました。旅館に戻り天気予報を確認すると、明日は午前中から夕方にかけて雨マークがついています。つまり、明日は雨ってことですね。今日は疲れたし朝起きて天気悪かったらそのまま帰っちゃおうかな、わざわざ悪天候の中登る意味もないしという思考がスムーズに頭の中を駆け巡り床に就きました。
7/21
起床し窓から外の様子を覗くと、うん、どちらかと言うと晴れているね。行くしかなくなったね。予想外の天気に若干動揺した心を朝風呂で落ち着かせます。早朝から入る温泉もとても気持ちが良くこのまま帰れたらどれほど幸せだろうという邪念が逆に強くなってしまいます。まあしかし、そうも言ってられないので朝食を取り準備を整え旅館を後にします。電車で六日町駅へ移動し六日町駅から巻機山の登山口のある清水までバスで向かいます。バスの車内でYAMAPを眺めていると4ヶ月で百名山を達成された猛者を発見し驚き慄きました。単純計算で1ヶ月に25座登ったとして週6ペースになります。週に一度しか休みがなく、実際次の山に向かう移動もある訳ですから実質休みなどないでしょう。これは凄い。そして、それ以上に気になるというかもはや憧れるのは、確実にこの人その間仕事していなかったであろうということです。とにかくその4ヶ月間は百名山を制覇するということに人生を充てがっていたのでしょう。つい、フォローしてしまいました。
08:47 清水に到着しバスを降りたらまずは登山口直下の駐車場まで歩いていきます。程なくして、山はあっちの標識。分かりやすい。これほどシンプルなものは初めて目にしました。その後、巻機山&キャンプ場案内の看板を通過。本日は巻機山とその先の牛ヶ岳まで行く予定です。
09:13 駐車場のある登山口に到着。駐車場にはトイレや靴など登山で汚れた道具を洗える水道が設置されています。いよいよ、登山道へ入ろうとすると周辺には注意書きのオンパレード。
巻機山は沢登りで有名で事故が起きることもあり注意書きがたくさんありますが、一般登山道であれば危険箇所もなく問題ありません。
登山開始から暫くは樹林帯の中を進みます。足下は粘土質のいかにも滑りそうな地面で場所によっては昨夜の雨により水溜りになっている部分もあります。この辺りは特筆することもなく作業的に黙々と登っていきます。
09:56 五合目に到着。一部空が開けていて心地よい風を感じることができました。六合目の手前で昨日越後駒ヶ岳で出会った京都の男性と本日も遭遇しました。昨日の時点では疲れていたら翌日巻機山は行かないとおっしゃっていましたが、やはり来ていましたね。男性は早朝から登られていたので既に下ってきています。今日もその場で山談義に花が咲き、貴重な情報を教えていただきました。また何処かでお会いしたらと挨拶してお別れしました。
10:24 六合目付近からはヌクビ沢の谷筋が見えました。なかなか迫力があります。
それから30分程進み標高1500mを超えると樹林帯を抜け、これまでと雰囲気がガラリと変わります。特にこの辺りは大きめの石と砂に覆われています。岩と砂の中でも隠れたようにひっそりと足下に咲くキンコウカ。
更に先を進むと雄大な景色が見渡せるようになりました。
木道の脇に咲く一輪のニッコウキスゲ。
11:23 八合目に到達しました。
巻機山の良さはこの八合目からです。八合目以降展望の良さが際立ちます。
11:30 九合目(前巻機)に到着。
ニセ巻機や前巻機と呼ばれるこの場所が九合目扱いとなっています。下から登っている途中で山頂のように見えるのでニセ巻機山という名前がつけられたのでしょう。山ではよくあることで、あそこが山頂だなと思ったけど、いざ到達してみるとまだ先があるという登山者泣かせの場所でいわゆるニセピークです。ここから先を眺めると、避難小屋までいったん下ってその後登り返しが待っているので山頂まではまだ遠く感じます。ここで下山途中の70代の男性とお話ししました。見た目は普通のおじいちゃんですが、二十歳の頃から山登りをやられているそうで経験50年以上の猛者です。若い頃は北アルプスなど好きな山ばかり行かれていたそうで百名山を全て制覇するという登り方をされていませんでしたが、ここ数年は達成する為に各地を巡っているそうです。百名山は残り30ほどということでした。また、百名山を終えた後は二百名山、三百名山と行きたいところはまだまだあるということでした。50年以上の経験者でもまだ行きたい山があるとは、恐るべし山の魅力。
11:48 九合目からは一旦下り、下った先にある避難小屋を通過。避難小屋周辺にはいくつか池塘が見られます。
池塘を抜けた先で最後の登りを超えると12:03 御機屋(おはたや)に到着。巻機山の最高標高地点は厳密にはここではありませんが、この場所に山頂の標識があります。巻機山は機織りの守護神で、機織りを生業とするかつての魚沼の人々の支えだったそうです。頂上一帯が御機屋と呼ばれ、美女が機を織っていたという伝説が名前の由来ということです。御機屋から最高地点までは傾斜が緩やかな道が続いています。
12:11 こちらが巻機山の最高標高地点。石が積まれたケルン以外何もなく、少し寂しい感じがします。前任たちの慣例に倣い、一番上に石を置きます。さて、本日は帰りのバスまでに時間がある為、巻機山山頂から先にある牛ヶ岳まで足を伸ばします。牛ヶ岳方面は景色が良くおすすめといことを事前の情報で得ていました。天候が怪しくなってきましたがせっかくなので向かいます。
山頂からの木道を少し進むと朝日岳方面との分岐がありました。
この朝日岳は群馬の谷川岳の近くにあります。谷川岳周辺には馬蹄形コースというほぼ周回出来るコースがあり、このコース上に日本三百名山に指定されている朝日岳も存在します。僕は谷川岳周辺が好きで何度か朝日岳を訪れたことがあり馬蹄形コースの朝日岳を過ぎた先(反時計回りに周った場合)に谷川岳と巻機山方面との分岐になるジャンクションピークという名がついた地点があることを知っていて、当時からその先にある巻機山の存在は気になっていました。その経緯があったため、この標識を目にした時は少し感動を覚えました。ちなみに、朝日岳から巻機山までの道のりはYAMAPなどの地図においても一般登山道扱いをされていないので歩く人がほとんどおらず、藪なども生い茂り距離も長くなかなか上級者向けのようです。いつか、挑戦したいと思います。そんな想いに駆られながらこの場所で少し休憩を取りました。
再開し、朝日岳との分岐の先にはこの辺りだけ残雪がありました。時期が良かったのか、結構花が咲いてるんですよね。
牛ヶ岳へは稜線上の緩やかなアップダウンが続きます。
夏の雲。巻機山を超えた向こう側は天気が良いようです。
ニッコウキスゲのお花畑になっている階段を登って行きます。
全体を通して、この辺りが一番きれいに咲いていました。
眼下には雄大な景色が広がっています。もう少し雲が少なければ100点ですが、まあ贅沢ですかね。もともと前日の天気予報は雨でしたからね。
牛ヶ岳の標識が見えなかったので地図を確認してみると、通り過ぎていました。牛ヶ岳山頂から先にもまだ稜線は続いていて、あまりの景色の良さと気持ち良さにより、気がつくと、前へ前へと山に引き込まれている自分がいました。こんな場所を歩いていると当ブログのタイトルになっていますが、どこまでも歩いていきたいと思ってしまいます。そんな場所をこれからも探していきたいです。
さてさて、ボチボチ戻りましょうか。下山途中に見つけた謎のハチロクのハチサン。まるで九九のようです。
15:48 登山口の駐車場まで戻って来ました。今日も臭くなるほど汗をかいたので人目を憚らず水道の水で頭から足から豪快に洗わせていただきます。まあ、ほとんど人はいませんが。帰り際に駐車場の管理人のおじさんと少し話をさせていただきました。おじさんを始め近隣の有志の方が巻機山の登山道や避難小屋などの維持管理や環境改善などをおこなっているそうです。ありがたいことです。またその中には日本で一番有名なトレイルランニングの大会であるTJARに参加されている方もいらっしゃるそうで、登山口から1時間で登ってしまうそうです。
16:49 バス停に戻って来て本日の乾杯。帰りは新幹線の車内で駅弁を頬張る予定でしたが、売り切れだった為、仕方なくコシヒカリソフトで我慢します。
巻機山予想以上に、と言ったら失礼ですが、とても良かったです。前日越後駒ヶ岳で遠回りしてでも無理せず下山した甲斐がありました。天気も予報より好転してくれたおかげでもあります。どこまでも歩いていきたいと思える道があった、そんな素敵な山でした。
日本百名山 31/100