どこまでも歩いていく

歩きながら考える。主に山登りとか。

実録 富士登山2022 〜3776ルート編〜 ②

前回の内容はこちら 実録 富士登山2022 〜3776ルート編〜 ①

 

正直、家を出発するまでは非常に憂鬱で行きたくないとすら思いました。これから夜通し何時間もかけて約50kmも山を歩くなんて。しかし、あれだけ周囲に言いふらした手前やらない訳にはいけません。

最寄り駅である吉原駅の南口から、まずはスタート地点である富士塚に向かいます。住民以外には迷路のように感じる真っ暗な住宅街の中を進んでいくと、入り口の鳥居がありました。こんな住宅街の真ん中に公園感覚であるんですね。到着するとすぐに雨が降り始めました。しかもレインウェアを着る必要があるほど降っています。最悪だ。レインウェアに着替えた後は小高い位置にある浅間神社の祠に登山の無事と3776ルート達成を祈願します。当然天気が良い日はここから富士山の迫力がある姿を拝めるのでしょう。もちろん、今はナイトアンドレインの影響でここが富士山のお膝元ということを忘れてしまうほど何も見えません。そして残念なことがもうひとつ。ここ富士塚には3776ルートの起点スタンプボックスなるものが設けられており、その中にはスタンプ、ガイドマップ、スタンプラリーシート、挑戦者識別ステッカー(ゼッケン)などが用意されています。ところが今回、僕が渇望していた挑戦者識別ステッカーがありませんでした。このゼッケンをザックに掲げて「私、ゼロから登っていますけど」と通りすがりの人にさりげなく自慢をしたかったのですが、その夢は儚くも消え去りました。また前日までは過去3776ルートを実践された方のように海まで行き、海水にタッチしてからスタートしようと思っていましたが(富士塚だと正確に海抜0mではない)、この悪夢の開幕を告げるような雨のおかげで既に海に行こうなんて気はさらさらなくなっております。余計なことは一切やる気は起きなくなっています。わざわざ海なんか行かなくても、公式にここが起点となっているんだから何も文句はないでしょ、とすら思っております。気をつけないとスタンプラリーの用紙も濡れてしまいます。スタートする前から想定外なことが多々あり、ため息をつきたくなりますが、ここで立ち止まっていてもゴールには辿り着きませんのでせめて歩きながら文句を言いたいと思います。ということで2022年9月6日19時50分、華々しく3776ルート挑戦開始です。

富士塚から吉原駅に戻り北口を出るとそこには標高3mの看板が立っていました。残りあと3773メートルです。雨は降ったり止んだりの微妙な状態が続きました。駅からの道のりはガイドマップでは少しわかりづらかったので、Googleマップを頼りにルート上の最後のコンビニであるセブンイレブン富士市大渕八王子町店を目指します。駅を出た後は沼川にかかる河合橋を渡り北西方向に進んで行きます。後日Googleマップで確認しましたが、ここからでもこんなに富士山見えるんですね。東海道沿いの歩道には時々足元に3776ルートのマークが記されていました。依田橋西の交差点を右折し北へ方向を変えます。

しばらく道なりに進むと平家越橋というところにやってきました。平家越橋が架かっている和田川の袂には「平家越の碑」が建っています。この碑は、はるか昔1180年に源平が対峙していた頃の故事に因んで建てられたものだそうです。しかし、3776ルートの挑戦を開始して間もない僕にはそんな悠久のロマンに浸る余裕など到底なく、石碑を一瞥しただけで通過します。源平の皆様申し訳ございません。

ガイドマップではこの平家越橋を左折しいったん富士市役所方面へ向かい、国道139号に出てから大渕街道、富士白糸滝公園線を経て前述のセブンイレブンまで北上する経路になっています。しかし、当時僕はGoogleマップに従って歩いていた為、平家越橋の交差点をそのまま北進するルートを取りました。

スタートしてから1時間ほど経過したところで、歩いていて傾斜を感じるようになりました。地形的に変化が出始め、まだ住宅街の中ですが上り坂が増えています。そして程なくすると大部分を坂道が占めるようになりました。思っていたより早い段階で傾斜が始まりました。

夜間で暗いのと土地勘がない為、自分がどこを歩いているか全くわかりません。ただただGoogleマップに従い歩いて行きます。東西に走る東名高速道路を北上し、富士市青葉台小学校を通過した頃には周囲の建物の密度は減り郊外の様相を呈してきました。ここから吉原駅方面を振り返ってみると、明らかに標高が上がっていることを感じるほどになっていました。小学校から15分の距離の第二東海自動車道を越えた先は、畑や森林が多くを占める地域になり辺りは真っ暗です。ただこの頃雨は止んでおり、大部分は雲がかかっていたため見えませんでしたが、暗闇の中に富士山の裾野が浮き上がっていることに気が付きました。今回の工程で初めて富士山を視覚的に捉えることができた瞬間でした。

起点の富士塚から2時間ほどでチェックポイントとして設定していた、ルート上最後のコンビニであるセブンイレブン富士市大渕八王子町店に到着しました。

現在時刻は21時56分。ここまでは予定通り、順調に進んでいます。

 

つづく