どこまでも歩いていく

歩きながら考える。主に山登りとか。

初めてのOZE 前泊編

さあやって来ました日本百名山チャレンジ、さっさと終わらせて百名山という呪縛から解き放たれたい。お次はどこへ登るかと申しますと福島県会津駒ヶ岳になります。前回の青森も同様雪が降ったら登りにくくなるエリアはなるべく夏のうちに登っておくことにします。

会津駒ヶ岳へ行くことを決めてから周辺の地図を眺めていると、なんと南西方面にはこれまた日本百名山である燧ヶ岳があり、距離的にも行けそうじゃないですか。しかも、両方を登るのにちょうどいい場所にキャンプ場がある。天才だ、これを発見した自分に酔いしれました。(ただ自分が知らなかっただけ。大昔から山はそこにある)そして、会津駒ヶ岳尾瀬国立公園に指定されているんですね、知らなかったー。

尾瀬は母が学校の行事か何かで行き「延々と歩いて何もなかった」という話を子供の頃に聞いた時から興味を覚えた場所です。とはいえ、僕は群馬県出身にも拘らず今まで尾瀬に行く機会がありませんでした。母と対極を成す存在として、こちらは何もない場所を求めるかのように各地を彷徨っております。(アラスカがその最たる例)あの話を聞いてから20年くらい経ってしまったでしょうか。お待たせしました、いよいよ初めての尾瀬、非常に楽しみです。

さて、今回は2連休だったので初日に会津駒ヶ岳、2日目に燧ヶ岳へ登る予定を立てています。尾瀬へ向かう移動で半日終わってしまいますので、前日のうちに拠点となる福島県檜枝岐村へ移動をしておく必要があります。ちなみに「ひのえまたむら」です。初見で絶対読めません。帰った後も読み方が出てこないことがあります。

2日間とも平日で梅雨がまだ明けていないとはいえキャンプシーズンに突入していますし、前回僕が登山について熱く語った影響で登山ブームに火がつき、登山客が押し寄せている可能性もあります。念の為、前日キャンプ場へ連絡をし予約を無事勝ち取ることが出来ました。電話口のおばちゃんも予約しておいた方がいいと言っていたし良かったです。キャンプをするのは去年の10月下旬に四阿屋山へ登った時以来です。テン泊用の大きいザックに適当に荷物を突っ込んでいきます。食料も基本的には持参して、水は現地調達します。食料は少々足りないような気がしますが、現地にJA檜枝岐村ストアーなる小さなスーパーのようなお店があるのでそこで調達する予定です。というかそこしかお店がなさそう、もちろんコンビニなんてないよ。あと少し心配なことは、現地の夜の寒さが読めず、僕は現在薄っぺらい寝袋しか持っていません。前回の四阿屋山ではこの薄情者とインナーシュラフを持って行きましたが、あまりの寒さに眠れぬ夜を過ごしました。まあ、今回は夏なのでこの薄っぺらだけで大丈夫でしょう。

移動日当日、夜勤が終わり逃げるように職場を離れ、そのまま電車に飛び乗ります。荷物は駅近くのロッカーに一晩預けていました。しばらく電車に揺られ、鬼怒川温泉で乗り換えます。
f:id:takayuuuuu:20230710083618j:image立派な駅舎ですね。乗り換えに30分くらい間が空いたので外に出てみました。駅前は綺麗に整備されていて足湯もあります。鬼怒川温泉は現在廃墟が目立ち、昔栄えていた頃の温泉旅館などの遺構が点在されていることが有名になってしまい、よくユーチューバーなどに揶揄されていますが、駅周辺からはそのような雰囲気は全く感じません。駅にも多くはありませんが、そこそこ温泉客がいましたし。

あー、パネルに顔はめたいけどひとりだから出来ない。

f:id:takayuuuuu:20230712183122j:image鬼怒川温泉駅のひとつ隣の新藤原駅からは野岩鉄道会津鬼怒川線になりますが、そこから先はもう秘境と言うか、山しかありません。電波も半分くらい繋がりません。そして面白いのが、駅名のほとんどが「○○温泉」となっています。川治温泉→川治湯元→湯西川温泉中三依温泉上三依塩原温泉口、と連続で温泉攻めを繰り広げる野岩鉄道さんには脱帽です。ユーチューバーにはこちらのエリアの特集でもしてもらいたいものです。

13:50 会津高原尾瀬口駅到着。
f:id:takayuuuuu:20230710083621j:imageここからバスに乗り換え、1時間くらいかけて檜枝岐村へ向かいます。乗客は自分を含めて3名。うち1名は駅の施設の人と話をされていたので常連と思われる山に登る気満々な格好の女性。もう1名はスーパーの弁当か何かを持っている地元民と思われる謎のおじいさま。そして、夜勤明け寝不足代表キャンプする気満々デカザック装備のわたくし。なかなか強いパーティだと思います。ただ、鬼怒川温泉くらいからちょっと気になっていましたが、寝不足で体温が下がっている僕には半袖だと肌寒い感じがしますね。というか、最近毎回のように寝不足で行動していますね。よくそんな状態でやっているな。

3名の戦士を乗せたバスは暫く進んで行くと道路沿いに川が流れていて、川の水がどこを見てもめちゃくちゃ透き通っています。バス越しに川を眺めていますが、魚が見えるんじゃないかというくらい透明であることに驚きます。途中、地元民と思われるおじいさまは、ここ!?、ここなのっ!?という場所で降りていかれました。何とも表現しづらいですが、その見えている2軒の家のどちらかがあなたのお家じゃなければ、それ以外マジで何もないよねという場所でした。その後はバスの車内でうとうとし、気がつけば檜枝岐村に入っていて、女性は会津駒ヶ岳登山口を過ぎた先で降りて行かれました。僕が今回泊まるキャンプ場がある場所は桧枝岐の道の駅など旅館やお店があるメインエリアからは少し離れています。途中にミニ尾瀬公園なるものがあって、その先になります。

15:30過ぎにキリンテ白樺キャンプ場に到着。
f:id:takayuuuuu:20230710083526j:imageキャンプ場の目の前がバス停になっていて、バスを降りたら電話した時のおばちゃんが小雨が降る中、傘を差して待っていてくれました。感動しました。挨拶をして、道路を挟んで反対側にある小屋で受付を済ませます。その際に明日駒ヶ岳、その翌日に燧ヶ岳へ登ことをおばちゃんへ高らかに宣言します。その後、村の中にある温泉に入るかと聞かれたので、入ります、と返答したところ400円で入浴できる券をいただきました。村のキャンプ場などの宿泊施設利用客だとこの入浴券がもらえるようです。実際はその入浴券をもらうのではなく事前に購入し、温泉ではその券を渡すだけで入浴が出来る仕組みになっています。桧枝岐には3つ日帰り温泉が可能な施設があります。道の駅に併設されているアルザ尾瀬の郷、会津駒ヶ岳登山口に近い駒の湯、そして駒の湯からもう少しこのキャンプ場寄りの所にある燧の湯(ひうちのゆ)となります。通常日帰り入浴の料金はそれそれ700円〜1000円となっていますので、どこでも1回400円で入れるこの券はとてもお得です。今回は入浴券を2枚購入しました。テントを張って速攻温泉に行こうと思います。

ちなみに本日はこのキャンプ場に他のキャンプ客はいないそうです。貸切状態です。前日おばちゃんと電話で話した時に予約しておいた方がいいと言っていましたが、まあ、忘れましょう。今日は平日ですからね、土日とか夏休みだと混むそうなので。

さて、テントを建て終えて温泉へ行こうと受付の前を通ると、優しそうな雰囲気のおじさんが温泉まで送るよと声を掛けてくれました。遠慮を知らないこの僕は「マジですか、助かります」と即答します。燧の湯はキャンプ場から徒歩で片道30分くらいかかります。しかも、山の中なので傾斜がありキャンプ場から行きは下り、帰りが登りになります。おじさんと軽トラで燧の湯まで送ってもらっている間いろいろお話しさせていただき、二人はご夫婦ということでこれからは親しみを込めて勝手にお父さん、お母さんと呼ばさせていただきます。(実際そう呼んでいた)

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燧の湯は内風呂と露天風呂がひとつずつあります。先客は一名のみ。暫くすると出ていかれたので途中から貸切風呂状態になりました。露天風呂の目の前には川が流れ木々の緑が映え、山の匂いが気持ち良く漂っています。そんな中で入る温泉。あまりにも気持ちが良くて、ふと、こんなことが出来て自分は幸せ者だなと思いました。

湯船を出たり入ったりして目を閉じてぼーっとしていると突然内湯から露天風呂に出るドアが開く音がして名前を呼ばれ、目を開けるとお父さんが立っていて(お父さんは服を着ています)「雨が降りそうだから帰りも送るよ」と声をかけてきました。もともと帰りは歩いて戻ってくる予定でしたが、お父さんのご厚意で帰りも送ってもらうことになりました。何て良い人なんだ。そして、何て良い村なんだ。内風呂に戻ると2名男性がいて、片方の人が一瞬お父さんかな思ったけど違ったら恥ずかしいので声は掛けず。17時に軽トラで迎えに来てくれることになっていますのでそれまでゆっくりします。その後、お父さんと合流し(内湯の人はやっぱり別人だった)、あまりにも温泉が気持ち良かったこともあり、まだ桧枝岐に来たばっかりで温泉に入る以外何もしていないけれど既に来た甲斐がありましたよ、と言うとお父さんは嬉しそうにされていました。普段温泉にはよく入りに行くのか聞いてみると、ほとんど行かないそうです。その理由が、なんと、桧枝岐の住民の家には全員温泉が引かれているそうで、蛇口を捻れば温泉が出てくるからです。家で温泉に入ることが出来るということです。いやー、本当にそういうのってあるんですね。桧枝岐には何もないけど、家で温泉に入れることはすごい良いと言ってました。素晴らしいですね。そして、お父さん、何かあるのが良いなんて若いうちだけですよ、と心の中で思いました。

キャンプ場に戻った後は持参したアルファ米とカレーで簡単な夕食を済ませ、明日の行程を練ります。幸運なことに、天気予報を見ると明日の天気が好転しています。明日も明後日も天気が良さそうです。ということで予定を変更、明日燧ヶ岳に登ることにします。そして、燧ヶ岳に登った後はせっかくだから尾瀬沼の方にも行きたい。初めての尾瀬なので出来る限り尾瀬を楽しみたい。尾瀬沼から大江湿原を通って沼山峠へ抜けて会津沼田街道を経由して七入まで戻りキャンプ場まで帰って来る。しかし、このぐるっと周回コース、なかなか距離があります。コースタイムを測るとだいたい13時間くらいでしょうか。まあ、荷物は基本的にこのキャンプ場に置いて軽身で行くので問題ないでしょう。そして、19時前に就寝。(早)明日は3時起きの4時出発予定です。

おやすみなさい

 

oze-fnd.or.jp

【登山シーズン突入記念】山の楽しみ方について

いや〜、梅雨に入りジメジメと気温も湿度も高く、寝ていても起きていても汗がじわりと体にまとわりついて鬱陶しいことこの上なし。加えて最近休みの日は、逆に寿命を縮めるんじゃないかというほど惰眠を貪り、起きたらYouTubeをボーッと見ているかスマホを開いてYahoo!ニュースで芸能人や歌舞伎界の下世話な話を眺めるばかり。このままだと脳みそにカビが生えて溶けてしまいそうなので文章でも書いて少しでも頭の体操としたい所存でございます。

さて、先日テレビでは富士山の山小屋が山開きの準備を始めたと言うニュースが流れ、山も雪溶けが進み、いよいよ登山シーズンに突入しました。ということで、今回は山の楽しみ方について綴りたいと思います。山に興味をお持ちの方、これから登山を始めようかなと思っている方がこれを機に山へ足を運んでいただける助力となればこれ幸いです。

夏の北アルプスにて

では、さっそくですが、僕が考える山の良さを挙げると次の3つになります。

①楽しみ方は一つではない

②運動になる

③人との出会い

はい、はっきり言って凡庸ですね。まあ、しかし、今のところこれに尽きるかなと思っています。

まずは、①楽しみ方は一つではない、について述べていきます。山の良いところは様々な楽しみ方があることです。メインになるであろう「登る」という行為だけ切り取っても、ハイキングから一般的な登山、ロッククライミング、川を遡行する沢登り、最近人気のトレイルランニングと複数に分類することが出来ます。

山の中へ入っていく

自分の経験を語ると、最初は散歩感覚のハイキングから始まりました。僕はもともと歩くことが好きだったので、自然の中を歩くことの気持ち良さを覚え徐々に本格的な山登りをするようになりました。その後道具を揃えて山でキャンプをするようになり、軽量で早く遠くまで行くことが出来るスピードハイクやトレイルランニングも楽しむようにもなりました。ロッククライミング沢登りは本格的に手を出していませんが、登山の中で部分的に出現する岩を攀じ登る恐怖や面白さ、川を渡渉する気持ち良さは随所に感じます。

日本第二の高峰北岳山頂を望む

人並みの表現ですが、山に登る理由はなんと言ってもそこから見える景色だと思います。海外の有名な登山家もどうして登るのかと聞かれて、景色だよと答えていました。初めて山に登った人も経験豊富なベテランも世界の難峰に挑戦するプロフェショナルでさえも、山をやっている人はみんな結局ここなんじゃないでしょうか。山から見る景色は普段生活している中では絶対見れないですからね。

今まで登った百名山は30に届かない程度であまり語れる経験があるわけではないですが、日本の山の景色で抜群に良かったのは劒岳です。登らずとも劒岳を見に行くことだけでも是非おすすめします。また、劒岳と言えば、新田次郎先生の「劒岳 点の記」。映画にもなりましたが僕はこの至極の一冊を読むことをおすすめします。と、劒岳に関しては記事を一本書けちゃうくらい推しています(1回行っただけだけど)。

劒岳と後立山連峰

登ること以外に山で楽しむことに目を向けると、写真撮影や高山植物、絵を描くなどが人気でしょうか。さらに裾野を広げるとオートキャンプや川遊び、自転車、ピクニック、渓流釣りなど、こうなるともう楽しみ方は千差万別、自由でどれもが正解です。

日本人はこだわる気質なのか一つのジャンルを極めることを好んだり尊敬の対象とされることがあると思います。ただ、僕個人の意見としては、一つのことを極めることはもちろんすごいけれど、それだけではもったいないとも思ってしまいます。例えば、百名山を全部登るというピークハントの要素がフォーカスされる行動をしていると、とにかく登って頂上を踏むということばかり夢中になり途中の経過を疎かにしてしまう気がして、後で振り返った後にちょっともったいなかったかなと思ってしまうことがあります。また、僕はスピードハイクやトレランのように早く登るということも好きなので終わった後は記録に満足する一方で、ゆっくり登った時に周りを見渡してもっと新しい発見があったかもしれない、自然の香りをもっと楽しめたかもしれない、など自分が取った行動以外の切り口でもっと山を味わえたであろう選択肢が残されていることに対してもったいなさを感じてしまいます。(まあでもそれは仕方がないことか。また行けばいいか。)

僕は登ることだけではなく写真を撮ることも好きですし、山の中でゆっくりキャンプをすることも好きです。美しい自然や景色の中でテントを張って、美味しいご飯を食べたり、コーヒーを飲みながら読書をするなんて、たぶん地球上における最高の贅沢の一つですよね。だからこそ、五感を全部使って山を感じたいし楽しみたい、僕はそうありたいと思います。

滝雲

次は、②運動になる、という部分をお伝えしていきます。

なぜか、山登りを終えた後は、体力気力ともに出し切ったなーってなるんですよね。家の周りをランニングしたり他のスポーツをしたりして同じように体力を消費して疲れることはあっても出し切ったとまでは感じません。実際、毎回山には全力で挑ませてもらっていますので、終わった後は体力が空でふらふらの状態になりますが頭の中はスッキリしているんですよね。これだけ気力体力を出し切れるのは登山しかないと感じています。そして、このことがストレス発散にも繋がっているんだろうなとは強く感じます。加えて、何十キロという重い荷物を担いで歩いたとか、何十キロも長い距離を歩いたとか山でのキツイ経験があると日々の仕事とか日常の嫌なことが楽に感じられます。身心ともに効果抜群ですね。

ただ、誤解しないでください。登山の良いところはゆっくりでも歩いていれば必ず山頂に辿り着くということです。若者から年配の人まで誰にでも出来ることです。ロッククライミング沢登りなど一部を除き、特別な技術など要りません。

ちなみに、僕が24歳の時に初めて富士山に登った後の感想は、「もう一生登りたくない」でした。その頃は、本格的に登山をしていなかったことや高山病で頭痛でふらふらになっていたこともあり苦行にしか思えませんでした。しかし、気がつけばその後も富士山には2度登り、去年は標高0mから登るという奇行に走るようにもなりました。

富士山山頂部

登っている間は基本的にキツイ。しかし、なぜか帰りの電車やバス、車の中で次はどこへ行こうかなと考えてしまう。それが山の不思議であり魅力だと思う。

きっとまた行きたくなる景色がある

最後は、③人との出会いにつきまして。山ではなぜか登山中すれ違う人に「こんにちは」と挨拶を交わす慣習があります。普段挨拶など全く気にしない自分も無意識に声が出てしまいます。毎回ではありませんが、この挨拶から何気ない会話に発展することもあり、別れ際には「お気をつけて」と互いの安全と健闘を讃え合います。なんか、こう考えてみるとかっこいいな。街の中では知らない人に話しかけるなんて気が引けますが、山の中だと自然と会話が出来るんですよね。そして、何よりおもしろい人たちに出会うことがあります。今まで印象的だったのは、過去にスポンサーが付くほどの実力の持ち主のトレランをされている女性、キリスト教三大聖地巡礼の一つであるスペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼を10年以上も続けていられる女性、定年後にアメリカ三大トレイルのひとつを完歩し現在二つ目に挑戦中の男性。きっと山でなければ出会うことがなかった素敵でかっこいい方々から貴重なお話を伺うことが出来ました。僕もいつか彼らのように魅力的な人間になれたらいいなと思います。

ここがわたしのアナザースカイ!

興味を持っていただこうといつも以上に力を入れて過去に撮った素敵な写真(自分で言っちゃう)とともにつらつらと駄文を書き連ねて参りました。少しでも山に対する何かのきっかけとなれば幸甚です。最後に皆さまへひと言添えて終わりにさせていただきます。

さあ、これから山を始めようと思っている皆さま、この夏一歩踏み出しましょう。もうすでに山の虜になられている方は一緒に考えましょう、「次はどこへ行こうかな」と。

谷川岳の夜明け

温泉旅行 岩木山・八甲田山編②

前回の内容はこちら温泉旅行 岩木山・八甲田山編①

朝準備を終えて外に出てみると、雨...。レインウェアを着て八甲田山に向かうバス乗り場がある青森駅まで歩いて行きます。天気が悪いのでさっさと登山を終えて温泉に浸かることを決意します。

08:10 八甲田山へ向かうバスに乗車。このバスは十和田湖行きということもあり、平日にしては多くの乗客が乗車されていました。バスが発車し、前日は青森の街の方からでも八甲田山の姿が見えましたが本日は全く見えませんでした。それどころか、青森の中心地を抜けて山の中に入っていくと、霧で運転も危ぶまれるほど視界がきかず。登山には絶望的な天候状況の中しばらく進むと、周囲を山に囲まれた中にぽっかり開いた空間のような場所に出ました。ここに差し掛かるといきなり視界が開けました。突然霧も晴れたので不思議な感じです。少し先にある萱野茶屋でバスは休憩を挟みます。その後は、八甲田山ロープウェイ、城ヶ倉温泉を経て09:25 酸ヶ湯温泉に到着。酸ヶ湯温泉では自分を含め2名しか降車する人はおらず、皆さん十和田湖まで行くようですね。

09:29 また足をつらないように準備運動をして、本日の登山開始。

f:id:takayuuuuu:20230621152834j:image酸ヶ湯温泉から登る場合、毛無岱を経て大岳山頂を踏み仙人岱方面から下りてくる、もしくはその逆回りが一般的な周回コースとなっています。今日は時間があるので毛無岱からロープウェイ山頂公園駅の方へ向かい、赤倉岳と井戸岳を経て大岳に至り、仙人岱方面へ降りて酸ヶ湯温泉まで戻ってくることにします。ところで、八甲田山八甲田山という名前の山があるわけではなく、周囲の18の山々の総称になります。一般的に八甲田山の山頂と言えば大岳の山頂になるかと思います。

昨日に引き続き本日も地面はぐちゃぐちゃで水溜りも所々にあるという絶好のコンディションにより、登山開始5分で右足が浸水してびしょ濡れになりました。今日もジャングル状態の道を進むのかと辟易しましたが、30分程経過したところで広々とした場所に出ました。ここから先は木道があり歩きやすくなっています。

f:id:takayuuuuu:20230618234233j:imageどん曇りです。雰囲気は良いんだけどなあー。
f:id:takayuuuuu:20230618234302j:image何もないですが歩いていて気持ちが良いです。天気が良ければ最高だろうな。
f:id:takayuuuuu:20230618234308j:image毛無岱を抜けるとループウェイ方面と大岳山頂方面との分岐点があります。通常はこのまま大岳に向かうことが多いと思いますが、ループウェイ方面がどうなっているのか気になるので宮様コースと呼称されるループウェイ方面へ向かいます。事前情報ではこちらのルートには一部雪渓があるようで戦々恐々としながら進みます。宮様コースは5分で浸水したスタート直後の道以上にぐちゃぐちゃで、藪も生い茂りジャングル状態でした。皆さんのお気に入りのシューズが、例外なく原型をとどめないくらい汚れること間違いなしです。

ついに現れた残雪。ああー、ここを行くのか、と思いきや、写真左側の脇へ進むのが正しいルートでした。
f:id:takayuuuuu:20230618234312j:imageこちらは雪の上を進みますが危険箇所もなく5秒くらいで渡りきります。
f:id:takayuuuuu:20230618234219j:image11:03 宮様コースを抜けて田茂萢(たもやち)岳手前からの眺め。
f:id:takayuuuuu:20230618234335j:image11:07 本日ひとつ目のピークである田茂萢岳(1324m)に到達するも看板も何もなく気が付いた時には通過していました。ただ、周囲は木々で遮れられている為、田茂萢岳山頂から景色は見えません。

11:18 八甲田ロープウェイ山頂公園に到着。
f:id:takayuuuuu:20230618234246j:imageこの辺りはロープウェイに乗ってきた観光客の方もちらほらいます。お土産とかあるのか気になったので駅の中に入ってみましたがなさそうでした。飲み物を購入し、外のベンチで小休憩を取ります。展望台がありますが本日は曇りがちで近くの八甲田山域の山くらいしか見えませんでした。
f:id:takayuuuuu:20230618234338j:imageでは再開して宮様コースとの分岐点まで戻ります。今度は八甲田ゴードラインというハイキングコースの田茂萢岳とは逆側のルートを辿ります。陸奥湾展望台や三山ビューポイント、その先では田茂萢湿原展望台、高山植物展望台などがあります。

11:47 足下ぐちゃぐちゃジャングルコースとの分岐点を赤倉岳方面へ進みます。

f:id:takayuuuuu:20230618234216j:image11:53 振り返るとロープウェイ山頂公園駅方面が見えます。雲の隙間から少し青空が顔を出します。
f:id:takayuuuuu:20230618234252j:image12:09 1521m地点。ここまで来れば赤倉岳までもう少しです。
f:id:takayuuuuu:20230618234328j:image赤倉岳近くの雪渓。急傾斜でかっこいいです。
f:id:takayuuuuu:20230618234305j:image12:13 本日2つ目のピークである赤倉岳(1548m)に到着。
f:id:takayuuuuu:20230618234255j:image赤倉岳から先は稜線歩きを楽しめて非常に気持ちが良い。火口跡もあり周囲の景色も素晴らしい。自然と足が軽くなります。

12:18 3つ目のピーク、井戸岳(1458m)に到達。
f:id:takayuuuuu:20230618234318j:image看板には1550mの表記がありますが、地図では1458mになっています。測り直したら当初と比べて低かったのでしょうか、それとも背が縮んだのでしょうか。

火口跡を横目に通過して行きます。
f:id:takayuuuuu:20230618234249j:imageいやー、しかし、赤倉岳から先の稜線は非常に素晴らしいものでした。酸ヶ湯温泉から登る場合、毛無岱から大岳鞍部避難小屋へ向かう為、この稜線は通らないので、もしかしたら知らずに帰ってしまう方も多いのではないでしょうか。個人的には遠回りをしてでも是非歩いてほしいおすすめとなっております。

稜線の終点から眼下に望むのは大岳鞍部避難小屋です。いったんあそこまで下りて行きます。
f:id:takayuuuuu:20230618234226j:image酸ヶ湯温泉からの周回コースだと毛無岱からこの避難小屋に合流します。

避難小屋以降は山頂まで最後の登りとなります。一部残雪もありますが、問題なく登って行くことが出来ます。
f:id:takayuuuuu:20230618234258j:image12:42 大岳山頂(実際1584m)登頂。痛恨の指見切れてる。
f:id:takayuuuuu:20230618234331j:image

山頂に到着した時には全方向雲で覆われ微塵も景色が見えない状況でした。そして、誰もいません。天気がよければ陸奥湾岩木山鳥海山も望めるそうです。写真を撮り終えたら下山に取り掛かります。

山頂を後にして下ること約15分、うーん、いかにも怪しげな雰囲気が漂っていますね。
f:id:takayuuuuu:20230618234229j:image長めの雪渓を渡って行きます。この辺はまだ平なのでそのまま下って行きます。
f:id:takayuuuuu:20230618234236j:image下りということもあり少し滑るので踏ん張って歩くことが面倒くさくなり、お尻で滑って行こうと思い試してみましたが、勢いが足りなかったのかあまり滑らずお尻が濡れただけだったので断念。引き続き歩いて下って行きます。

先ほどの長めの雪渓をお渡り終えた先、終わったかと思いきやまだ先がある。しかも今までで一番急。下が見えないことに恐怖を感じ、これはさすがに無理だと思いチェーンスパイクを装着します。
f:id:takayuuuuu:20230618234223j:image写真だと全く伝わりませんが、これが実際やや急で恐怖心を煽ります。まあ、下が崖になっているわけではないので最悪滑って落ちても大丈夫そうですが。この斜面を降り終えそうになったところで下から登って来ようとしている女性二人と遭遇。お二人はしっかりチェーンスパイクを装着しトレッキングポールも持っており完璧な装備で準備は万全。僕も見習うべきです。雪渓の状態を聞かれたので、ここだけ少し急になっていますが抜けた先は全然大丈夫ですよ、とエールを送り別れます。降り切った場所から振り返ると、先ほどの二人が登って行きます。
f:id:takayuuuuu:20230618234242j:image雪渓を降りた後、チェーンスパイクを脱いで少し先に進むと今度は単独の女性に会いました。やはり雪渓の状態を心配されているようなので、先程と同様に最初だけ少し急でここを登り切ればあとは大丈夫ですよ、とお伝えして別れます。が、こちらの女性はどうやらチェーンスパイクを持っていない様子。ポールは持っていたので登りだしどうにかなるかなと思いましたが別れて数分後、やっぱり心配になったので振り返ると、先ほどの女性は雪渓を登り始めていました。何となくおぼつかない感じもしたので女性のもとへ走って行き、これ使って良いですよ、とチェーンスパイクを渡しました。女性からは感謝されましたが、「下りたら帰っちゃいますか、酸ヶ湯温泉に泊まってたりしますか」と返却について聞かれたので、帰っちゃいますけど大丈夫ですよ。それ1000円くらいですし(実際はたしかAmazonで2000円くらいだったような。こすい)、と爽やかに返答し女性と別れます。チェーンスパイクを渡した後、僕はかっこつけて振り返らずに背中を見せて歩いて行ったので結局どうなったのかわかりませんが、きっと雪渓を渡りきって山頂まで到達出来たことでしょう。まあ、このいっときの雪渓で登頂を諦めて欲しくないという気持ちがありましたし、もしかしたら彼女も自分みたいにわざわざ遠い所から登りに来ていたのであればなおさらです。

人助けをして勝手に良い気持ちになった僕はルンルン気分で下山を続けます。この荒々しい感じも素敵に感じます。
f:id:takayuuuuu:20230618234322j:image先ほどから硫黄の匂いがするなーと思ったら、立ち止まらずに通過して下さい。
f:id:takayuuuuu:20230618234342j:image過去この周辺で学生が亡くなった事故が発生したこともあるそうです。長居は危険です。

川の向こう側へ渡ります。
f:id:takayuuuuu:20230618234213j:imageそこから先はしばらくすると樹林帯に入りまたぐちゃぐちゃロードのオンパレード。

14:22 無事に登山口まで下りて来れました。
f:id:takayuuuuu:20230618234239j:imageせっかくなので地獄沼まで足を伸ばします。高温の源泉が湧き出しているそうです。f:id:takayuuuuu:20230618234325j:image14:32 酸ヶ湯温泉まで戻って来て、本日の行程終了です。お疲れ様でした。 

温泉前にてオロナミンCで乾杯。
f:id:takayuuuuu:20230618234210j:imageでは、温泉に参りましょう。ここ酸ヶ湯温泉はヒバ千人風呂(混浴)で有名です。
f:id:takayuuuuu:20230618234315j:image千人入れるほど広い温泉ということのようです。混浴以外にも男女別の温泉もございます。国民温泉指定第一号である酸ヶ湯温泉は2023年6月9日をもちまして設立90周年を迎えたということで、7月9日まで割引料金で日帰り温泉に入ることが出来ます。通常大人一人1000円ですが700円でした。ありがとうございます。皆さまも是非この機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。と、宣伝をしたところで温泉の感想にいきます。まずは、メインの混浴ですが入場してみると女性の姿はゼロ。後で調べてみると、立板で仕切りを作って女性スペースがあるようでした。まあ、この時代に混浴はなかなかね。こちらの白濁のお湯の泉質は酸性硫黄泉です。強酸性のようで、浸かりながら足が痒いなあとボリボリ足を掻いていると非常にヒリヒリして驚きました。ちなみにこの千人風呂には洗い場がありません。温泉オンリーとなっています。体を洗いたい場合は男女別の温泉に移動する必要があります。僕も登山で汗だくになった後、最初に千人風呂に入ってしまい順番を間違えたと思いました。体を洗うことと男性用の温泉も気になったので移動しました。完全に別の場所にあるので着替えて移動する必要があります。男性用のお風呂は千人風呂と比べると非常に控えめなサイズになっています。言うならば十人風呂でしょうか。十人風呂は千人風呂と比べると、あまりヒリヒリせずまろやかだったような気がします。酸ヶ湯温泉は温泉客や宿泊客で平日にも拘らず、なかなかの賑わいを見せていました。

二日間の温泉旅行が終了しました。両日とも天気があまり良くなかったのは残念でしたが、岩木山八甲田山や青森の良さを感じることが出来ました。長時間の移動や岩木山での足つりもあり、果たして疲労と癒しを天秤にかけた場合どちらに傾いたかは疑問ですが、歴史のある温泉に2回も入れて満足でした。

さて、次はどこに行こうかなあ。(どうせ、山登り)

おわり

温泉旅行 岩木山・八甲田山編①

わたくしは肌が弱く、荒れたり痒くなってしまったり顔から指先、足にかけて全身に肌トラブルを抱えております。初夏に入り、肌の状態が芳しくなく、いよいよ皮膚科にも通うようになりましたのでここはお湯の力も借りようかと思います。ところで、湯治とはよく言ったもので、温泉に入るとなるほど確かに肌の状態が良くなります。温泉の近くに住む方は毎日温泉に入ってお肌がきれいと良く言いますしね。ということで、2連休がございましたので湯治の旅に出ることにしました。

今回選定させていただいたのは、青森県の嶽温泉と酸ヶ湯温泉。決して岩木山八甲田山が近くにあるからという訳ではございません。嶽温泉と酸ヶ湯温泉の近くにたまたま岩木山八甲田山があるので、せっかくだから登ったあとに温泉に浸かろうという魂胆です。

夜勤明けの3時間睡眠で夜行バスに乗り、狭い車内でうとうとしながら寝れたのかどうかわからない状態で朝8時過ぎに弘前駅に到着。次のバスまで少し時間があるのでマクドナルドで朝食をとり、9:10 嶽温泉方面行きのバスに乗車します。平日の朝なので弘前駅周辺は渋滞していました。弘前城の脇を抜けて郊外へ向かって行きます。

しばらくすると正面に岩木山が見えてきましたが、中腹から頂上にかけて分厚い雲が懸かっています。あの雲の中は雨になっているんじゃないかと不安になるほど。もともと6月の梅雨の時期ということもあり、計画を立てた時点で台風が来ていない限り雨が降っていても登りに行こうとは考えていました。

あ、ちなみに前歯は治しましたので、堂々と口を開けることが出来ます。数年後忘れた頃にウィダーインゼリーの飲み口を前歯で齧ってまた欠けるんでしょうが。

岩木山はいくつか登山ルートがありますが、今回は嶽温泉のある嶽コースを往復することにしました。当初は岩木神社が起点となる百沢コースから登り、嶽温泉まで降りてくる周回コースが面白いかなと思いましたが、百沢コース上部に雪渓があり、YAMAPなどで事前情報を確認するとまだけっこう雪が残っているようなのでビビって断念。あと雪渓用の装備を持っていくのが面倒くさいという体たらくな理由。念の為チェーンスパイクは持参します。

岩木山に近づくと左右にはりんご畑というまさに青森を象徴する景色が広がっていました。そして10:10 嶽温泉に到着。

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ここ嶽温泉は江戸時代に作成された、温泉番付なるものに名を連ねていたそうです。見にくいですが「津軽嶽の湯」と記載があります。ちなみに東の大関草津温泉、西の大関有馬温泉となっています。この温泉番付に載っている温泉を巡るというのも面白そうですね。

10:17 それでは本日も元気に登山開始です。まずは八合目のリフト乗り場までひたすら登って行きます。その間のコースタイムは2時間35分、標高差は約800mとなっています。基本的には岩木山はどのコースも登りは登りだけ、下りは下りだけという富士山スタイルです。

雨が降っていた影響か地面がぐちゃぐちゃで水溜まりになっている場所もあります。また、土や木が濡れていて滑りやすくなっています。スタート直後は周囲の木々も背が高く道幅もありますが、徐々に道幅は狭く木々に圧迫されジャングルのような雰囲気を感じます。気温はそこまで高くありませんが、周囲が樹林帯で風が遮られ湿度が高い為全身から汗が吹き出します。

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途中で百沢コースから周って来た男性と話したところ、けっこう雪があって大変だったおっしゃっていました。こちらのコースにしてひと安心です。

11:16 開始から1時間ほど経過。八合目のリフト乗り場までもうすぐ。しかし、早くも疲労と集中力の低下を感じます。ひたすらジャングルの中を進むことに嫌気がさしています。

11:30 八合目リフト乗り場に到着。どん曇りです。下から登らなくても岩木スカイラインを経由して車やバスでここまで来て、八合目からリフトで九合目まで行くことが出来ます。今回も持参しているデカビタのゼリー飲料でエネルギーを補給。リフト乗り場の脇から再度登山道に入り再開します。

ところが、僅か5分後、少し段差が高い部分で右足を前に出して踏ん張った瞬間、

ピキーンッッッッッッ———

「痛っっっっ」。

右ふくらはぎをつりました。痙攣です。即座にその場にしゃがみ込み、右手でつま先を掴んでふくらはぎを伸ばしますが、痛さに悶絶。はい、もう岩木山登山終了です。僕は一度痙攣を起こすと基本的に再起不能になります。ストレッチをしても一日中痛みが残ってしまいます。夏の暑い時期になると水分が足りないのか運動中に痙攣を発症させることが割とあります。山で足をつった思い出は数年前の谷川岳西黒尾根、その時も夏真っ盛りでした。振り返ると確かに注意を怠っていました。夜行バスによる長時間移動と寝不足の状態にも拘らず、早過ぎるくらいのペースで突き進み汗も滝のように吹き出しています。メジャーリーガーも何が大変かと言うと移動だ、というのを誰かが言っていたことを思い出しました。

まあ、しかし、わざわざ遠路はるばる青森まで来ているので「まだ俺には左足がある!!」と沈んんだ自分の心に無理やり言い聞かせ、足を引き摺りながらも登ろうと思います。が、実際テンションはガタ落ちしています。痙攣を再発させないように右足を先に出さず、左足を頼りにのっそりと前に進みます。まるで先ほどとは別人のようです。

11:59 えっちらおっちらと足を引き摺りながらリフト方面からの合流地点まで辿り着きました。f:id:takayuuuuu:20230620200103j:imageここまで来るとそれまでのジャングルとは様子は一変し、九合目以降はゴツゴツした岩がたくさんあります。これが岩鬼山とも呼ばれる所以でしょうか。
f:id:takayuuuuu:20230618183849j:image上空では雲の隙間に少し晴れ間がのぞきます。

f:id:takayuuuuu:20230618183820j:image12:03 頂上が見えて来ました。
f:id:takayuuuuu:20230618183814j:imageその後も右足に負担を掛けないよう、着実に歩を進め、

12:24 岩木山山頂に到着。
f:id:takayuuuuu:20230618183811j:image山頂にある岩木山神社奥宮で無事登って来れたことに感謝を表し一礼。

f:id:takayuuuuu:20230618183830j:image残念ながら雲が多すぎて下の景色が全く見えません。まあ、雨に降られなかっただけましですね。では、下山に取り掛かりましょう。山頂直下はやや急登で少し滑べりやすいので、踏ん張った際にまた足をつらないか心配です。

13:10 足をつらないように怯えながら下山を続け、リフト乗り場まで戻って来ました。世界は暗く霧に包まれています。駐車場では視界が殆どありません。

15分程休憩して再開。ここから先はまたしばらく続くジャングル中を降りなければなりません。僕が転ぶのを誘うように湿った土や石が待ち構えています。後半は集中力も切れたせいかツルツル滑りがちになってしまいましたが、何とか持ち堪え、ラスト2.5kmとなると傾斜も緩やかで道幅も広くなったので調子に乗ってランニングをかまします。これまた数時間前に足をつった時とは別人のようです。

14:30 嶽温泉まで戻って来ました。いやあ、無事戻って来れて良かったです。登山が終わって勝利の乾杯をしようと自動販売機に向かうと、

北東北限定だとおっ!
f:id:takayuuuuu:20230618183853j:imageしかし、結局買ったのはいつものこれ。温泉番付と共に乾杯。
f:id:takayuuuuu:20230618183843j:imageそれではお楽しみのお風呂タイム。事前にネットで調べたところ、山のホテルで日帰り入浴が可能らしい。が、閑散としていてどう見てもやっている気配がない。 

f:id:takayuuuuu:20230618183837j:image小さな温泉街なので他に温泉に入れるところがあるのか不安に思いましたが、隣の小島旅館は玄関が空いていて、入浴できますの張り紙あり。
f:id:takayuuuuu:20230618183846j:imageということで、今回はこちらの小島旅館さんでひと風呂浴びます。しかも、大人一人400円という安さ。中に入ると、まさに古き良き旅館という感じです。しかし、玄関には誰も人がおらず、キッチンの方から物音がするのでそちらに向かい旅館の主人の方なのか声を掛けると、「やだ、恥ずかしいから外で」と言われました。恥ずかしい?と首を捻りましたが、先程と違う点と言えばマスクをして出て来た主人に400円を支払いお風呂に向かいます。

温泉は10人も入ればいっぱいになってしまう控えめの大きさです。洗い場に置いてあるのは石鹸とボトルに入った謎の液体のみ。液体はシャンプーで合っているか不安もありましたが、頭に乗せてみると泡立ったので間違いないようです。洗った後は髪の毛も体もパリパリのぱっつんぱっつんです。一方で温泉は乳白色で非常にまろやかです。左右でぬるめと熱めに分かれています。ぬるめの温度が絶妙で一生入っていられると錯覚するほど気持ちが良く、まさに至福のひとときです。先客も一人しかおらず、すぐに出ていかれたので貸切状態です。熱い方にも入ってみると肩までつかることが至難な程に熱く、こちらは癒されるというより沸々と情熱がみなぎる感じがします。存分につった足をストレッチをして温泉を後にします。というか、登山中に足をつったことで湯治に来ているという本来の目的をすっかり忘れていました。

それからは弘前駅にバスで戻り、電車で青森駅へ移動。青森駅到着後は少し駅前を観光します。いやー懐かしい。前回青森に来たのは8年ぶりくらいでしょうか。さゆりちゃんの名曲の碑と青函トンネルが出来るまで青森と函館を結んでいた八甲田丸のコラボ。f:id:takayuuuuu:20230618183840j:imageザ・青森。あれ、前来た時これあったかな。
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夕焼けが映える帰り道。
f:id:takayuuuuu:20230618183833j:image翌日は八甲田山を予定しています。夕焼けの次の日は晴れるってよく言いますよね。明日が楽しみです。

つづく

サクッと女峰山 前歯を治さず山登りに行った話

前回皇海山にて大切な前歯を一部亡くした数日後、歯医者に行くか山に登りに行くか自分の中でG7サミット級の会議が開かれました。結果、各国の首脳陣は全会一致で山に登りに行くという決断に至りました。まあ、もともと別の歯の治療で一週間後に予約入ってますしね。その時に先生には前歯も欠けちゃいましてね、えへへ、とでも言っておけば良いでしょう。

さて、今回は朝から行って夜には帰る通常の日帰り登山の予定です。皇海山登山後は3〜4日くらい足の筋肉がパンパンだったので今回は少し気楽なハイキング気分で行けるところが良いな、あまり遠いところにも行けないので、どうしようかと愛用の百名山・二百名山・三百名山マップを眺めていると気になったのは御正体山と女峰山。諸々勘案して今回は女峰山にしました。去年の男体山以来の日光です。

ということで、コースを選定します。最近参考にしている方のブログがあり、日光東照宮が隣にある二荒山神社から登り、霧降高原へ降りる山行記録を載せていました。しかし、こちらのルートは距離が20kmとやや長いこと、登りの標高差が2000mと日帰りにしては少し難易度が高くブログの方も途中の避難小屋で一泊していました。バスや電車の時間も鑑みて僕は逆回りで行くことにしました。逆からだと距離は変わりませんが、スタート地点の霧降高原(標高1300m)までバスで行けるので(女峰山の標高は2483m)登りの標高差が1100mに減ります。女峰山山頂からは二荒神社まで降りてきて、歩いて駅まで戻る周回コースにします。コースタイムは585分+日光駅まで徒歩25分なので約10時間。目標は8時間くらいでしょうか、ちょっと大変そうですが女峰山まで行けばあとは下りなので問題ないでしょう。

そして、当日。日光までの電車内、通勤・通学のみなさんで混雑していて座れず。

日光に到着後、まずはバスで霧降高原へ向かいます。良い天気です。本日は季節以上に気温が上がるそうです。

f:id:takayuuuuu:20230520201734j:imageバスに揺られて霧降高原に到着。9:34 準備をして、さあ本日も元気にスタートです。

霧降高原名物の1445段の階段。まずは、この階段を登り切ることから始まります。

f:id:takayuuuuu:20230520201905j:image霧降高原は以前一度来たことがあります。この階段には結構苦労した覚えがあります。前回はニッコウキスゲがきれいに咲いていた時期でしたが、今回はまだ5月ということもあり全く咲いておりません。前述の通り本日は気温が季節以上に高くなる予報ということで、水場が見当たらない今回のコースはやや不安があります。水分としてはお茶と水を500mlずつ、ウィダーインゼリーと最近お気に入りのデカビタゼリーバージョンをひとつずつ持参しています。前回の皇海山のように水分を不用意に失わないように注意しなければなりません。

階段を三分の一くらい登ると景色が開けてきます。
f:id:takayuuuuu:20230520201813j:image半分超えると疲れてきました。後半は一直線なのでまだ登りだから良いけど下りは高度感があってちょっと怖そうです。

後半バテましたが20分ほどで到着。
f:id:takayuuuuu:20230520201724j:image階段を登り切った先には展望台があります。
f:id:takayuuuuu:20230520201909j:image展望台までは観光客の方もたくさんいますが、そこから先は登山者しかいなくなります。

9:55 小丸山に到着。
f:id:takayuuuuu:20230520201931j:image10:32 赤薙山に到着。標高2000mを超えました。地味に急登があってひーひー言いながら登っています。
f:id:takayuuuuu:20230520201747j:image11:04 奥社跡
f:id:takayuuuuu:20230520201847j:image

11:18 何て書いてあるのだろう、ヤハズ?
f:id:takayuuuuu:20230520201951j:imageあの中央の一番高い場所が山頂でしょうか。まだ結構先ですね。
f:id:takayuuuuu:20230520201927j:image11:38 一里ヶ曽根(標高2295m)に到着。ここは景色が見渡せて高度感を感じることが出来ます。
f:id:takayuuuuu:20230520201822j:image一里ヶ曽根から約20分後。前方を仰ぎ見ると、うーん、雪あるよね。今日履いている愛用軽量シューズは滑りやすいので恐れおののきます。

f:id:takayuuuuu:20230520201838j:image奥の雪がたくさんあるのは群馬の谷川岳あたりでしょうか。
f:id:takayuuuuu:20230520201918j:imageあと少し
f:id:takayuuuuu:20230520201808j:image頂上に近づくとやや荒々しい様相を呈します。細めの急登もありました。
f:id:takayuuuuu:20230520201729j:image頂上直下は残雪がけっこうありましたが危険箇所はなかったので良かったです。
f:id:takayuuuuu:20230520201900j:image12:23 山頂に到着。
f:id:takayuuuuu:20230520201851j:image山頂は気持ちが良い。日光の山々の山頂付近になると荒々しくなる感じや景色が良く見えるところが気に入っています。男体山(父)・女峰山(母)・太郎山(子)を日光三山と呼ぶそうです。また今後、残りの太郎さんを登りに参りましょう。

帰りは、ザレていて
f:id:takayuuuuu:20230520201800j:imageガレている
f:id:takayuuuuu:20230520201913j:imageロープ離したら下まで滑りそうで怖い。
f:id:takayuuuuu:20230520201738j:image草原を駆け抜けます。
f:id:takayuuuuu:20230520201921j:imageだいぶ降りてきました。しかし、下に入った途端、脚の疲労を感じ始めています。

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13:45 黒岩
f:id:takayuuuuu:20230520201856j:image黒岩では男性2名女性1名のグループに出会いました。少しお話させてもらったところ、早いねすごいねと言っていただきましたが、実際もう結構疲れています。僕は荷物も軽量です。お話しさせていただいたお父さんは60l以上ありそうな大きなザックでしたが、それを背負って登る方がずっと大変です。みなさんは前日男体山に登り、志津小屋で一泊して宴会されていたそうです。素敵です。楽しくお話しさせてもらいましたが、心中では前歯が欠けていることがバレていないか不安でした。

皆様と別れた後は再び駆け降りて行きます。

f:id:takayuuuuu:20230520201804j:image白樺金剛
f:id:takayuuuuu:20230520201832j:image日光の街が見えてきました。
f:id:takayuuuuu:20230520201937j:imageツツジが華やか。
f:id:takayuuuuu:20230520201827j:image登山道が終わりを告げます。
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途中、足が木の根っこに引っかかり右肘から崩れ落ちるというハプニングもございましたが無事に下まで降りて来ることが出来ました。登山道が終了したようで林道に変わったので調子に乗ってジョギングを開始しますが、まさかのルートからどんどん外れて行きます。調べてみると、この林道をそのまま下って行っても街の方まで降りれるようですが相当遠回りになるようなので諦めて戻ります。面倒くさいので斜面を無理やりよじ登って正規のルートに戻りました。その後、暫くして

徳川さま〜。もはやゴール同然なのでコーラを購入し、がぶ飲みします。
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有名な神橋。圧倒的に海外勢からの人気。周辺に日本人は僕ひとりしかいませんでした。
f:id:takayuuuuu:20230520201720j:image最終的に東武日光駅に16:06に到着。6時間30分でゴール。上り1351m、下り2156mでした。やっぱり逆からだったら厳しかったですね。良い運動になりました。歯医者に行かず山登りに行った甲斐がありました。

おわり

【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山③

前回の前歯が欠けた悲劇はこちら【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山②

「寒っ」、目が覚めたのはわずか15分後でした。愛用のダウンジャケットに身を包んでいましたが初夏とは言えやっぱり山の朝は寒い。山の地面にダイレクトで寝ていましたし標高も1900mくらいまで上がっていて、風が吹けばなおさら肌寒さを感じます。ということで、03:45出発することにします。

すると、15分ほどで庚申山山頂到着。

f:id:takayuuuuu:20230520183959j:image庚申山から先は尾根沿いにいくつかのピークを経て皇海山に至ります。

時刻は4時を過ぎて東の空が茜色に染まります。グッドモーニングジャパン。
f:id:takayuuuuu:20230520184007j:image一度日が出てくると急激に明るくなってきます。今まで暗くて動きにくかったですが、明るくなればこちらのものです。

途中分かりにくい藪漕ぎや急登もありましたが駒掛山、渓雲山と順調にピークを経由し、

05:08薬師岳に到着。f:id:takayuuuuu:20230520184041j:image薬師岳の先では目指す皇海山山頂がよく見えます。うん、でもまだあんなにあるんだね。
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薬師岳から鋸山の間は険しい難所が出現します。岩を攀じ登ったり降りたりが好きな人にとっては楽しめる箇所だと思います。妙義山剱岳など過去に登っていますが基本的にビビりの僕には涙ものです。早朝からの懸垂下降状態に、もう怖くて無理ー、いっそのこともうここで諦めちゃおうかなー、今引き返せばそんなに大変じゃないなーと甘えた言い草しか出てきません。これ暗かったら無理だったな、いや、暗い方が周りが見えないから逆に怖くなかったのかな。ビビり過ぎてめちゃくちゃ時間がかかりました。そして、無駄に力み過ぎて太もも両方痙攣しました。

06:05 恐怖畏怖葛藤痙攣を乗り越えて鋸山に到着。初めて自分で自分を褒めたいと思います。
f:id:takayuuuuu:20230520184003j:imageしかし、皇海山方面に向かう鋸山山頂直下もロープでの下りのおまけつき。もうやめてー。

薬師岳から鋸山の間の難所に完全にイップス状態になった僕は正直これ戻るの面倒くさいなと敗北モードで地図を眺めていると、鋸山から薬師岳ではなく別方向に下りて行き庚申山山荘まで戻るルートを発見。しかも地図を見る限りあまり険しくなさそう。神からの天啓、欠けた前歯をむき出しにしてニヤリと笑います。夜から登っている疲労、前歯を一部失っていること、太ももの痙攣、その他自分のコンディションを勘案してそちらのルートで戻ることを即断しました。臨機応変に対処することは非常に大切です。

その後は一旦やや高度を下げて不動沢ルートとの合流地点に向かいます。現在廃止されている林道から登ってきた場合に合流するところです。ここから登り下りできたら距離も短いし危険箇所もなさそうなので気軽に日帰り出来ますね。  

07:22 ふと気になって、iPhoneで自撮りをして欠けた前歯の状況を確認したところ、自分の化け物のような形相にぞっとします。気を落としていても歯は生えてこないので最後の登りに挑みます。  

07:42 皇海山山頂到着。山頂から景色見えないのかーい。
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ともあれ、山頂まで無事辿り着いたので持参したミニコーラで乾杯。朝早いこともあり誰もまだいません。休憩していると寒くなってきたため滞在時間15分弱で下山開始。

帰路、不動沢ルートの分岐付近で今回の山行で初めて他の登山者に遭遇。ヘルメットを着用されたダンディなおじさま。僕と同じく天啓ルートで戻るようなのでスマホの地図でこっちですよと懇切丁寧、和顔愛語で接していますが、内心前歯が欠けていることを悟られていないか心配しています。

その後、鋸山まで戻ると山頂では8人くらいの中高年のグループがいました。こちらも前歯が一部ないことに気づかれぬよう軽く挨拶するだけで去ります。彼らも半分くらいはヘルメット着用でした。ハーネスつけている人もいました。割と頷けます。鋸山からは方向を変えて下山します。

さてこちらは今回の山行で一番良かった、鋸山直下の六林班方面に下りていく際の風景。

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山から見る景色はきっと遥か昔から変わっていないのだろと思いをめぐらすことがあります。もちろん山の中でも登山道や山荘がつくられたり細かい部分は変化しますが、山から見ることが出来る自然の形は地形が完成された太古の昔からそう変わらないので、きっと千年前や数百年前の人と同じ景色を見ていることでしょう。

そんな浪漫に浸った後は、胸の高さまである藪漕ぎです。やはり山は飴と鞭です。というか鞭の方が圧倒的に多い気がします。
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六輪班峠からは長い長いトラバースロードが続きます。このトラバース区間は道幅が狭く、滑りやすかったり片側が急斜面になっていて落ちないようにとなかなか気が抜けません。そして、この頃には体力の低下を著しく感じ、歩けども歩けども距離が縮まりません。唯一の救いはこちらのルートには所々に川があり水分を補給出来ることです。欠けている歯を食いしばりながら進むこと約2時間、庚申山山荘手前の天下の見晴との分岐に到着。せっかくなのでということで体力を振り絞って見に行くことにしましたがうーん、イマイチ。その後はもう足の靭帯が切れそうで、まだかまだかと鼻息荒く進みます。

12:21 庚申山山荘に戻って来ました。
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ここからはもう危険箇所はないからひと安心です。一の鳥居方面から来た場合、正面にあったんですね、暗くて気がつきませんでした。

昼間の一の鳥居。無事に戻って来れた感謝を脱帽の上、深々と一礼。新緑に朱色が映えます。
f:id:takayuuuuu:20230520184018j:image13:55温泉のあるかじか荘へ到着。足がもう動かないのでひと風呂浴びます。
f:id:takayuuuuu:20230520184037j:image温泉は天才です。30分ほどの入浴でしたが足がかなり回復。また歩けるようになりました。

かじか荘から駅までの道のりでは下手したら襲われてしまうのではないかと不安になるほど猿がたくさんいましたが、みなさん僕が通りかかる前に逃げて道を開けてくれるので手を上げて謝意を表します。

16:16 ゴール地点である原向駅到着。いやあ、長かった。GPSを確認すると最終的に38.9kmでした。帰宅後3〜4日間は足の筋肉痛が続いていました。今回の山行は距離や難度において申し分なく、全体的に新緑や高山植物が咲いていてきれいで楽しめました。北側の沢入山を経由するルートや松木川方面、袈裟丸山等気になる場所が他にもありますのでこのエリアにはまた来たいと思います。楽しみにしていたわたらせ渓谷鉄道では行きは夜間のため景色が見えず、帰りは爆睡でこれまた見れず。

おわり

 

【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山②

前回の内容はこちら【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山①

かじか荘から先を歩いていると今まで耳にしなかった音が聞こえたので、動物かなと思うと前方に拳くらいの石が落ちてきました。周囲には落石注意の看板がところどころにあります。少し土砂崩れのようなところもあります。危ない、危ない。その先には車両通行止めのゲートがありました。落石のためこの先車両通行止めと記載されています。先ほど石が転がって来たのを見ているだけあって恐怖を感じます。

しばらくするとそれまで舗装されていた道から林道に変わります。ここまでは傾斜も緩やかで険しい場所はありません。気をつけることは落石に注意するくらいです。そして林道の終点に到着すると突如現れた赤い鳥居。この一の鳥居と呼ばれる場所からいよいよ本格的に登山道の開始、山の中に入っていくという雰囲気です。深夜の暗闇の中に浮かぶ赤い鳥居はやや恐ろしい雰囲気を感じますが、無事に戻って来れるよう一礼してくぐります。次に目指すポイントは庚申山荘になります。一の鳥居から先は樹林帯になる為、暗さに拍車がかかります。山でお馴染みのピンクテープはありませんが、ルート上の木に反射板が設けられていて僕のヘッドライトの光に反射して方向を知らせてくれます。それまで聞こえていた川の音も徐々に消えていきます。川から離れて行っているようです。この暗さと静けさが3時間睡眠の僕の眠気を誘います。鳥居を通過して以降、道を見失うようになってきました。このような標高が上がりきらない樹林帯が一番道を見失います。どこにでも入っていけてしまうからです。間違っては見上げて木の反射板を探したりスマホGPSで方向を確認して修正します。庚申山荘までの間には鏡岩、夫婦蛙岩、仁王門と呼ばれる大きな岩があります。山によくある昔の逸話つき。

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ふと振り返ると樹林の隙間からは月が見え、妖艶なオレンジ色に輝いていました。

 

一の鳥居から1時間20分経過した頃でしょうか、02:17 庚申山荘に到着。ですが、これは後でGPSの結果から判明したことであり、実施は暗くて山荘がどこにあるのかわからず通過していました。何度か迷子になっていたこともありコースタイムより時間がかかっていたようです。山荘から30分程先に進んだ場所では少し開けた場所があり、遠くには街の光が見え標高が上がって来たことを感じられます。

その先では徐々に道幅が狭くなり場所によっては梯子があったり岩を攀じ登るような場所も出てきます。そして先ほどまで以上に道を見失うようになってしまいました。GPSで正しい方角を向いてもそちらにはルートらしきものが見えず、どこだろうと首を傾げます。ここかしこを彷徨います。そうこうしている内に大きな岩の間の急斜面に入り込んでしまいました。登れなくもないかと足を踏み入れましたが、ふと冷静に考えるとさすがにこれが正規のルートじゃないよなと思い、首をぐいっと真上を見上げると鉄製の梯子の側面のようなものが見えました。あそこが正しいルートかと思う一方でどうやってあそこまで行くのだろうかと悩みます。このまま垂直に直登はさすがに無理そう。左側から登っていくのも真上よりは行けそうだけれども、その先につながっているのか不明。一旦戻って右回りに行くにしてもその道は見当たりません。考えた末に引き返すことにしました。しかし、引き返すにも斜面がザレていて滑って気を抜くとそのまま下まで落ちてしまいそうです。断崖絶壁ではないので落ちたら死ぬとかはなさそうですが、掴めるところがないので滑ったらそのままけっこう下まで落ちてしまいそうです。嫌な予感がするなと振り返って下ろうとした直後、ズズズッ。「あ、危ねえ」。少し滑りましたが、何とか踏み留まりました。しかーし、その時の勢いでザックの脇に入れていたお茶のペットボトルが落ちてしまいました。あああ、貴重な水分が。今回は500mlのお茶と水ひとつのみ持って来ているので早くも半分失いました。落下したお茶は見える範囲にはあったので取りに行こうか悩みましたが、そのまま斜面を滑って下まで落ちてしまう危険性があったので諦めました。いや、水が足りるか不安だな。真夏ではないからまだ大丈夫だけどまだまだ序盤だぞ。そして、この間の格闘で指が血だらけになりました。

その後は何とか無事に正規のルートに戻り、03:28少し開けた景色が見える場所があったため休憩を取ることにします。まだ庚申山頂上にはたどり着きません。結構遠いなー。暗いから進むの遅いし疲れるなー。少し寝てもいいかなーと気が緩みウィダーインゼリーを飲もうと飲み口を咥えた瞬間、「バキッッツ」。不快な音が静寂に包まれる未明の山中に響きました。瞬時に状況の理解をしたと同時に「またか」とため息が漏れます。はい、前歯が欠けました。数年前にも全く同じくウィダーインゼリーを飲もうとした際に前歯で噛んで欠けたことがあります。歴史は繰り返すとはこのことでしょうか。発端は虫歯で前歯が少し欠ける→詰める→出勤中のウィダーインゼリーで更に大きく欠ける→詰める→登山中のウィダーインゼリーでまた欠ける(※今ここ)。登山中に転んだりぶつけたりして登山者としての勲章のように歯が欠けるならまだしも、休憩中のウィダーインゼリーで歯が欠けるとはいったいどういうことでしょうか。ゼリー自体は柔らかいのにそれを飲もうとして歯が欠けるとは皮肉なものです。本当にどうしようもありません。しかも、絵に描いたような欠け方で左の前歯の中心よりのところが綺麗に正方形に欠けています。歯が欠けているおじさんを想像していただければまさにその通りです。はあ、もうどうでも良くなりました。ということで不貞寝することにします。04:30まで1時間寝ることにします。その頃には日も出てくるでしょう。何ならもっと寝ても良いです。今回時間はたっぷりあります。愛用のモンベルのダウンジャケット(愛用し過ぎて綿が抜けてきている)を羽織り、マットも何もない地面の上に横たわります。こんな所で寝ていたら万が一、人が通りかかったらたまげるでしょうがそんなの関係ありません。さすが愛用のダウンジャケット、アラスカでも酷使していただけあって暖かいです。ぐっすり眠れそうです。それでは、おやすみなさい。

つづく